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2011年5月27日 (金)

やす請けあい

夕べ、ほろ酔い加減で家にもどったら、仕事場の机上に留守中の言づけがメモしてありました。九州のミウラさん(元秀山荘社長)から電話があったようです。
彩林倶楽部パンフレット 150〜200字程度
〈あっ、しまった。すっかり忘れてた〉
彩林倶楽部というのは、大分の飯田高原に建つミウラさん所有のロッジです。そのパンフのコピー文を頼まれていたのです。
「ここの文章なんだけどさーー。もう辻さんがいなくなっちまったから、あんたに頼みてえんだが」
と言われたのは、2ヵ月以上も前でした。
東京駅近くにあった伝説的な山道具屋「秀山荘」は、辻まことの洒脱な広告によってつくられた、と言っても過言ではありません。たとえスポットとはいえ、代役がとてもつとまらないのは百も承知ながら、
「あっ、いいですよ」
と即答したのは、たぶんそれがフグ懐石をご馳走になっていた最中だったからに、ほかなりません。目先のエサにつられる、やす請け合いは、わたしの悪い癖です。

その仕事がのびのびになっていたのは、ひとつには、どこかで「辻さん」を意識したせいでしょうね。「なあに、あんたの思ったようにやってくれりゃいいんですよ」とミウラさんはおっしゃったが、そうもいかないのです。
とはいえ、すでにパンフレットのデザインはほぼできている。わたしのコピー待ちというのだから、ただちにやらねばなりません。
今朝は早くから、ちょっと酒の余韻をかりてとりかかりました。参考までにと、『辻まこと 山とスキーの広告画文集』(秀山荘)を開いてみました。
「人生には要らない荷物が
多すぎることに気づくのは
山旅での収穫である。
そして『人生にどうしても必要な道具がある』
ことに気づくのも山旅での収穫である」
こんな調子です。
ちょっと拾い読みしたのが、どうもいけなかった。辻まこと調がちらついたら最後、書けども書けども収拾がつかなくなったのです。

〈いいやもう、適当でーー〉
開き直ったすえ、やっと原稿を送ったのは昼ちかく。思い知ったのは、わたしは、「○○調」という仕事が、ほとほとできない。これはフリーランスの人間にとっては、致命的なことです。臨機応変に雑誌やクライアントのニーズに応じられないのだから。
そこで、「まてよっ」と思ったのでした。
辻まことも、彼独特の画風、言葉づかいを生涯、微塵も変えませんでした。徹頭徹尾、辻まことでした。でも、仕事には十分に恵まれていました。
では、辻まことにあって、自分にないものーーってなんだろう。むろん、彼はわたしよりも、はるかに器用でした。でも、そればかりではない気がします。 Img_0369

この先は長くなるので、次の書籍「辻まことのはなし」(仮題だよ)で、じっくりと展開することにいたしますかな。

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